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20世期リーダー論の最高峰 リチャード・ニクソン著『指導者とは』

かなり前に、大学の先生からおすすめの本として紹介されていたのですが、これまで読めていなかったニクソン著『指導者とは』。

前から読みたいと思っていながらもなかなか読めていなかったのですが、コロナで予定が一気に無くなったのを機に読んでみました。

実際に読んでみて、これは「多くの人に読んで欲しい!」と思う内容だったので、ぜひ概要とともにシェアしたいと思います。

著者:リチャード・ニクソンについて

著者であるリチャード・ニクソンは、第37代アメリカ合衆国大統領であり、ベトナム戦争からの撤退、冷戦下のソ連とのデタント、中国との国交樹立などの功績を残した人物です。

個人的に思いつくのは、ニクソンのイメージは、1960年の大統領選挙でジョン・F ・ケネディと行ったテレビ討論のシーン。

CHICAGO – SEPTEMBER 25: NIXON KENNEDY DEBATE John F. Kennedy, left, and Richard M. Nixon at the first televised presidential debate. (Photo by CBS via Getty Images)

 

ケネディは濃紺の背広、赤と青のコントラストのはっきりしたネクタイ、ライトブルーのワイシャツで臨んだのに対して、ニクソンはブラウンのグラデーションのスーツ。

当時アメリカの一般家庭のテレビは白黒がほとんどだったため、濃紺の背広ははっきりとして、テレビ映りもよい、ケネディの方が、頼り甲斐のある力強い印象を与え、濃い色のコントラストのネクタイも積極的でエネルギッシュな印象を与えました。

一方、ニクソンのブラウンのスーツは背景に溶け込んでしまってはっきりせず、弱くボヤけた印象を与える事になり、その影響もあってかニクソンはケネディに敗れてしまいます。

これはわりと有名な話で、イメージがいかに大切かを唱えるときの一つの教訓として今でもよく引用されたりしています。

このようにケネディに敗れたり、ウォーターゲート事件で失脚し、大統領辞任に追い込まれて任期中に辞職した唯一のアメリカ大統領となったりと、挫折を知り尽くした人物と見ることもできます。

そんなニクソンが、国際社会の舞台で対峙した様々な世界の指導者たちの姿を描き出しながら「指導者の資格」を語るのが本書です。

世界の偉大な指導者たち

本の中では、各章ごとにニクソンが実際に対峙してきた世界の指導者たちについて述べられています。

ウィンストン・チャーチル〜われらが時代の最大の人物

シャルル・ドゴール〜神秘な指導力

マッカーサーと吉田茂〜東と西の出会い

コンラート・アデナウアー〜西欧と鉄のカーテン

ニキタ・フルシチョフ〜権力へのあくなき意思

周恩来〜中国式革命家

いずれも第二次大戦以降の国際社会を築き上げてきた指導者たちです。

日本からは、唯一吉田茂が登場していますが、単独ではなく、マッカーサーと一緒に登場しているところはちょっと残念。しかし、それぞれの指導者のバックグランドや功績、実際に交流を持っていたニクソンによる人物評などをある程度網羅的にインプットできると思います。

「どこまでニクソン自身が書いたかは不明だが、他国の首脳に対する 観察や分析が抜群。ニクソンの観察眼、分析力の卓越さがうかがえる」と教授が絶賛していました。

指導者の資格について

僕が、本書の中で必読だと思うのが、最後の章「指導者の資格について」です。

世界最大の権力者と言われても過言でないアメリカ大統領を務めた彼が記すリーダーの条件は、よくテレビなどのメディアや世間で称賛されるされるものとはまるで違うものです。

僕たちは、リーダーや指導者は清廉潔白で人格者といった言葉で表されるように「きれい」な人であることを求めがちです。

しかし、ニクソンに言わせれば、「陰険、虚栄、権謀術数などは一般的に悪とされるが、指導者にはなくてはならない」ものであり、対立する派閥をまとめたり、自分の地位を正しく印象付けたり、目的を達成する上では必要不可欠な要素。

しかも、「指導者に必須のこうした汚い一面は何も政治だけの話ではなく、視聴率争いに血道を上げているテレビのコメンテーターが他人の争いをさも汚いことのように評するのを聞いて片腹痛いと思う時がある」などと皮肉たっぷりに述べている様も痛快です。

実際、「政治家」と「メディア、学者」のように当事者とそうではない者の見える景色は大きく異なります。

理想や倫理は建前として大切な一方で、現実世界においてはそんな単純ではない、という冷厳な事実が本書の中では余すことなく述べられているのです。

他にもチャーチルやドゴールなど偉大な指導者たちの政治人生から得られる教訓や彼らの苦悩、それらに対する彼の分析は、全てが金言と言っても過言ではありません。

・指導者は、いつ戦うべきか、いつ退くべきか、いつ所信を貫くべきか、いつ妥協すべきか、いつ発言し、いつ沈黙すべきかを知らねばならない。

・指導者は広い視野を持つと同時に、明確な戦略とビジョンを持たねばならない。

・指導者は全体を眺め、一つの決断と他の決断との関係を見極めなければならない。

・指導者は先頭に立つべきだが、支持者がついてこれないほど先頭であってはならない。

・苛烈な選挙戦では、指導者は支持者を前進させるとともに、どのあたりまで前進できるかを見定めなければならない

将来、「政治家になりたい」と思っているような人にお勧めするのはもちろんですが、政治の世界に限らず、企業などあらゆる組織のリーダーに通用するメッセージではないかと思います。

僕の拙い語彙力と文章力で、この魅力を余すことなく伝えることにはほぼ不可能に近いので、「百聞は一見に如かず」ということでとりあえず読んでみることを強くおすすめします。

 

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